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かつては、意識、意図して歩み寄る必要があったラッパーとバンドマンが、同じフレームに違和感なく収まる瞬間がいよいよこの日本にもやってきた。THE HELLO WORKSの名のもとに集結した3人組ヒップホップ・グループ、スチャダラパーと5人組インストゥルメンタル・バンド、SLY MONGOOSE、そして、脱線3/ROBOCHU & DAUのMC、ロボ宙からなる10人が立ったステージは、“HIPHOP+BAND=HIPHOP BAND"という安易な足し算からは生まれないダイナミズムがその瞬間の到来を如実に物語っている。 彼らがバンドを結成するにあたっては、SLY MONGOOSEのベーシスト笹沼位吉が、10年以上の歳月をかけ、その関係性を熟成させてきた。'04年12月にベーシストとして参加した客演曲集『BASS ON TRUE STORY』を発表している彼は、DJ/トラック・メイクの感覚を演奏にきっちり反映することが出来る希有なプレイヤーであり、ヒップホップやハウス/テクノ、レゲエと、グルーヴが核となるダンス・ミュージックに数々の強力なベースラインを提供。スチャダラパーの盟友であるTOKYO No.1 SOULSETのサポートを務めていたこともあり、プライベートで彼らはかねてから親交があった。そうした縁から、笹沼はベーシストとして、『fun-key LP』 ('98年)収録の「4ch FUNK」や」「FUN-KEY PERSONALITY」、『The 9th Sense』('04年)収録の「スキマチック」といったスチャダラパーの作品に参加。ライヴでの共演も幾度となく果たし、'06年3月にリリースされたSLY MONGOOSEのセカンド・アルバム『TIP OF THE TONGUE STATE』収録の「Defenseless City」にスチャダラパーとロボ宙をフィーチャー。この楽曲をきっかけにTHE HELLO WORKSは結成された。 そのバンド名こそ、冗談めかして、中年ミュージシャンの悲哀をにじませている彼らだが、レゲエ/ダブを様々な音楽に援用解釈したクロスオーバーなグルーヴ・ミュージックを極めているSLY MONGOOSEは、シングル「Snakes and Ladder」をきっかけに、国内だけでなく、世界中のダンス・フロアで支持を拡大中。また、近年のスチャダラパーも、生楽器を意欲的に取り入れつつ、オルタナティヴなディスコ/ハウスに通じるトラックで言葉のエッジを尖らせているし、ライヴ・エレクトロニカへの興味を募らせ、ROBOCHU&DAUを結成したロボ宙も昨年10月に発表したアルルバム『LIFE SKETCH』ではフリーフォームなラップを披露。それぞれが3者3様で何度目かのピークを迎えつつあるだけに、彼らが一丸となって制作を進めている今秋リリース予定のアルバムはジャンルを超えて聴かれる画期的作品になりそうな、そんな予感がしている。 *小野田雄 (AREGISTA) |